【映画レビュー】広瀬すず主演『ゆきてかへらぬ』感想と評価|詩と愛に生きた魂たちの物語【Amazonプライムビデオ】
映画『ゆきてかへらぬ』の基本情報とあらすじ
配信:Amazonプライムビデオ
監督:根岸吉太郎
脚本:田中陽造
出演:広瀬すず、長谷川泰子、木戸大聖、中原中也、岡田将生、小林秀雄
昭和初期の文学界を舞台に、詩人・中原中也と、その恋人・長谷川泰子、そして文学者・小林秀雄との三角関係を描いた本作。広瀬すずが長谷川泰子を演じ、女性の自由と芸術への情熱を力強く表現。恋と詩、芸術と孤独が交錯するなか、人生をかけて愛し、傷つき、それでもなお詩を紡ぎ続けた若者たちの姿が、静かに胸に響いてきます。
タイトルの『ゆきてかへらぬ』は中原中也の詩「帰郷」にも通じるもので、時代の流れのなかで失われたもの、そして戻らない時間への哀惜が込められています。
映画の見どころと評価(ネタバレなし)
この映画の最大の魅力は、詩情あふれる映像美と俳優陣の繊細な演技です。
昭和の風景を再現した美術セットは息をのむほどリアルで、まるで一枚の詩のよう。特に、雪が静かに降りしきる中、長谷川泰子が中也の詩集を手に涙を浮かべるシーンは、本作のテーマを象徴する名場面といえるでしょう。
また、広瀬すずの演技が圧巻です。感情を言葉ではなく、表情やしぐさで語る彼女の姿から、観客は泰子の複雑な心の内をありありと感じ取ることができます。音楽もピアノと尺八を用いた抒情的なサウンドで、物語を優しく包み込んでいました。
映画を観て感じたこと(感想)
この映画を観終わったあと、しばらく立ち上がれないほど胸が締めつけられました。愛とは何か、表現することの意味とは何か──そんな問いを私たちに静かに投げかけてくるのです。
中原中也の詩に込められた苦しみや純粋さ。泰子の自由を求める魂。小林秀雄の理知と葛藤。誰もが不器用で、誰もが真剣に生きている。その姿に、自分自身を重ねてしまう瞬間が何度もありました。
「今の自分は何を愛して、何を守っているだろう?」
そんなふうに考えるきっかけを、この映画は与えてくれます。
映画の背景と制作秘話
本作は、詩人・中原中也の実際の人生をモチーフにしつつも、史実に縛られすぎず、文学的な再構成を施しています。
監督の根岸吉太郎氏は、「登場人物たちは皆、激しい愛情と孤独を抱えて生きていた。それを現代の若者にも通じるものとして描きたかった」と語っています。
また、広瀬すずさんは長谷川泰子を演じるにあたって、「彼女の詩や手紙を読み込み、彼女の中にある“自由への渇望”を理解するのに時間がかかった」とインタビューで語っていました。
撮影は実際の鎌倉文学館や、昭和初期の街並みを再現したセットで行われ、文学と映像の融合を目指した丁寧な演出が評価されています。
映画の評価(批評)
- 良かった点:
・映像美と音楽の融合が素晴らしく、まるで詩を読むような映画体験。
・広瀬すずをはじめとする俳優陣の演技が高水準で、登場人物の感情がリアルに伝わってくる。
・昭和初期の文学界というニッチな題材を現代的に再解釈した点は高く評価できる。 - 気になった点:
・文学的な台詞や抽象的な演出が多く、やや難解に感じる観客もいるかもしれません。
・中原中也の詩や背景に詳しくない人にとっては、感情移入しづらい場面もある。
総合評価とおすすめポイント
⭐️⭐️⭐️⭐️(4.5/5)
『ゆきてかへらぬ』は、詩的で美しく、そして深く考えさせられる作品です。華やかな展開は少ないかもしれませんが、登場人物の静かな情熱が、じわじわと心に沁みてきます。
文学が好きな方、芸術に触れたい方、人間の感情の深さに興味がある方には、ぜひ観ていただきたい一作です。
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